〜パンダ技士の徒然日記〜

一児の父親です。事実は小説よりも奇なりと言われますが、世の中は本当に面白いことばかり。何でも自分の目で見て、聞いて、読んで、食べて、考えて、試してみて、書いてみて。真面目だったり、シュールだったり、センチメンタルだったり。

卵の緒

今週1週間、隙間時間を使って小説を読みました。

作品は瀬尾まいこさん著の「卵の緒」。

読み終わった感想。うん、何かもう本当に登場人物がみんな素敵すぎる。読み終える前と後では、自分の周りの空気が違っている、一言でいうとそんな小説でした。空気感を変えてしまう小説です。瀬尾まいこさんの文章は元々好きで数冊読んでいましたが、この作品は初めて手にとりました。書店の前を通ったらたまたま目に入って、題名もそうですが装丁に惹かれました。吸い寄せられるように手にとった作品。こういうのを本との出会いって言うんでしょうね。

 「僕は捨て子だ。子供はみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。」から始まる物語。でも悲壮感は全くなく、愛情とユーモアにあふれている。本当の家族とは何か?、親がいつも子供に伝えなければいけないことは何か?本当に大切なものは何なのか?家族の形を考えさせられました。

そして君子さん(母さん)が、気持ちのいいくらい真っ直ぐに偽りのない気持ちで育夫(僕)に「好きだ」「愛してる」を言いまくる。「母さんは、誰よりも育夫が好き」その偽りの無い気持ちが作品を通して絶え間なく流れていて、もう何だか微笑みが止まらなくなりました。本当に心が温かくなる小説でした。でもそれだけではなく、君子さんの器の大きさがまたいい。育夫(僕)に学校を休ませようとした時の言葉「今日は休みにしましょう。学校なんてこれから毎日嫌ってほど行けるわよ。頭痛、風邪、吐き気、便秘、何がいい?」

愛情とユーモアに溢れた小説。空気感を変えた一冊。一個人以上に、一人の親として、大好きな小説になりました。是非、お勧めしたい一冊です。

 読み終えた後の夕焼けがきれいでした。心の琴線に触れた確かな1日でした。

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卵の緒 (新潮文庫)

卵の緒 (新潮文庫)