〜パンダ技士の徒然日記〜

一児の父親です。事実は小説よりも奇なりと言われますが、世の中は本当に面白いことばかり。何でも自分の目で見て、聞いて、読んで、食べて、考えて、試してみて、書いてみて。真面目だったり、シュールだったり、センチメンタルだったり。

もらい泣き

冲方 丁さん著のショートストーリー集。

一言で言うと、きらきらした小さな光が詰まっている本だと思います。大それた話は書いていません。大きな刺激もありません。でも誰もが心の中に持っている小さな光、この本では良心と言っていますが、良心が主人公である本です。

ひどく繊細でいながら、批評めいたことを一切さけてしまう話をもつ、その柔らかな生き物を、私は今のところ良心と呼んでいる。〜文中より〜

単なる涙ちょうだいの話ではなく、何かもっと心の奥からじわっと暖かくなって、批評めいたことは一切生じない本でした。とても優しく、記憶に残る一冊でした。読み終えた後は、「あぁ、うん。そうだよね」。そうとしか思えない。それが素直な感想です。

「この子は光を奪われたんじゃない、この子の中に光があるんだって。」

「感動はあるんだよね。するんじゃなくて」

「誰かに押されるまでは決して点灯しないスイッチがある。だがいったんスイッチが入れば一生自分を動かし続けてくれる」

「相手が生きてくれればこそ、こうして和解も訪れてくれる」

「ありがとうって、ああ、本心だったんだなってやっと納得できたんです」

「一緒にいてくれて、ありがとう」

この本、僕はとても好きです。自分の中の良心に、きっと何かが響きます。

もらい泣き (集英社文庫)

もらい泣き (集英社文庫)