今週のお題「人生に影響を与えた1冊」
「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」
人間、どう生きるか、どのようにふるまい、どんな気持ちで日々を送ればいいか、本当は知っていなくてはならないことを、わたしは全部残らず幼稚園で教わった。人生の知恵は大学院という山のてっぺんにあるのではなく、日曜学校の砂場に埋まっていたのである。わたしはそこで何を学んだろうか 〜文中より〜
現実世界では、幼稚園で学ぶことよりもそれ以降の人生において学ぶことの方がはるかい多いです。しかし、本当に必要なことは既に幼稚園の砂場で学んでいたのかもしれません。読みながら、ゆっくりと心の洗濯をされるような一冊です。多分、人生を劇的に変える強烈な言葉が書いてる本ではありません。でもゆっくりと、確実に、そして読み返す度に、一度立ち止まって自分の生き方を振り返らせてくれます。その意味では、人生に影響を与えた1冊ではありますが、今でも新鮮に影響を与え続けてくれる1冊です。どうか、何度もゆっくりと、読み返して頂きたい言葉が詰まっています。
とりわけ印象に残る言葉を、第1章の「私の生活信条」より。
- 何でもみんなで分け合うこと。
- ずるをしないこと。
- 人をぶたないこと。
- 使ったものはかならずもとのところに戻すこと。
- ちらかしたら自分で後片づけをすること。
- 人のものに手を出さないこと。
- 誰かを傷つけたら、ごめんなさい、と言うこと。
- 食事の前には手を洗うこと。
- トイレに行ったらちゃんと水を流すこと。
- 焼きたてのクッキーと冷たいミルクは体にいい。
- 釣り合いの取れた生活をすること──毎日、少し勉強し、少し考え、少し絵を描き、歌い、踊り、遊び、そして、少し働くこと。
- 毎日かならず昼寝をすること。
- おもてに出るときは車に気をつけ、手をつないで、はなればなれにならないようにすること。
- 不思議だな、と思う気持ちを大切にすること。発泡スチロールのカップにまいた小さな種のことをわすれないように。種から芽が出て、根が伸びて、草花が育つ。どうしてしてそんなことが起きるのか、本当のところは誰も知らない。でも、人間だっておんなじだ。
- 金魚も、ハムスターも、二十日鼠も、発泡スチロールのカップにまいた小さな種さえも。いつかは死ぬ。人間も死から逃れることはできない。
- ディックとジェーンを主人公にした子供の本で最初に覚えた言葉を思い出そう。何よりも大切な意味をもつ言葉「見てごらん。」
人間として知っていなくてはならないことはすべて、このなかに何らかの形で触れてある。ここには、人にしてほしいと思うことは自分もまた人にたいしてそのようにしなさいというマタイ伝の教え、いわゆる「黄金律」の精神や、愛する心や、衛生の基本が述べられている。エコロジー、政治、それに平等な社会や健全な生活についての考察もある。
このなかから、どれなりと項目を一つ取り出して、知識の進んだ大人向けの言葉に置き換えてみるといい。そして、それを家庭生活や、それぞれの仕事、国の行政、さらには世間一般に当てはめてみれば、きっとそのまま通用する。明快で、揺るぎない。わたしたちみんなが、そう、世界中の人々が、三時のおやつにクッキーを食べてミルクを飲み、ふかふかの毛布にくるまって昼寝ができたら、世の中どんなに暮らしやすいことだろう。あるいはまた、各国の政府が使ったものはかならずもとのところに戻し、ちらかしたら自分で後片づけをすることを基本政策に掲げて、これをきちんと実行したら世界はどんなに良くなるだろう。
それに、人間はいくつになっても、やはり、おもてに出たら手をつなぎ合って、はなればなれにならないようにするのが一番だ。
- 作者: ロバートフルガム,Robert Fulghum,池央耿
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1996/03
- メディア: 文庫
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エッセイ集ですので、1話1話は短いです。就寝前に1話づつ読んでみてはいかがでしょうか。心の持ち方や考え方を簡単に変えることはできません。世の中そんなに単純ではない。でも、それでもこの本には、自分の方向を変えてくれる言葉が詰まっています。それも「思い出す」という方法で。やはり本当に大切なことは、幼稚園の砂場で学んでいたのかもしれません。ただ忘れているだけで、本当はみんな答えを既に持っているのかもしれません。
また、紹介を迷いましたが、エッセイの数を加えた新編も出版されています。時系列上、私にとって影響のあったのは新編ではなかったのですが、併せて紹介させて頂きます。
- 作者: ロバートフルガム,Robert Fulghum,池央耿
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2004/03/11
- メディア: 単行本
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明日からの生活に、人生に、いい影響がありますように。